「親がいなくなった後、この子のお金は誰が管理するの?」
障害のある子どもを育てていると、将来の生活や財産管理について不安を感じることがあります。
現在は親が、
- 預貯金を管理する
- 年金などの収入を確認する
- 生活費を支払う
- 福祉サービスを利用する
- 保険や行政の手続きをする
といったことを行っていても、親が亡くなったり、高齢や病気などで支援できなくなったりすれば、別の支援体制が必要になります。
そこでこの記事では、障害のある子どもの「親亡き後」の財産管理について、主な5つの方法をわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 親亡き後は「お金を誰が管理するか」が重要
- 成年後見制度は選択肢の一つ
- 成年後見制度を利用すればすべて解決するわけではない
- 任意後見など、親が元気なうちに準備できる方法もある
- まずは「親がいなくなったら困ること」を整理することが大切
「親亡き後」とは?

「親亡き後」という言葉は、障害のある子どもを支えてきた親が亡くなった後だけを指すものではありません。
親が高齢になったり、病気になったりして、これまでのように子どもの生活を支えられなくなった場合も含めて考えることがあります。
たとえば、現在は親が、
- 子どもの預貯金を管理する
- 年金や手当などを確認する
- 家賃や光熱費を支払う
- 福祉サービスの手続きをする
- 医療機関とのやり取りをする
といった役割を担っているかもしれません。
問題になるのは、
「親がその役割をできなくなったら、誰が引き継ぐのか?」
ということです。
そのため、親が元気なうちから少しずつ準備しておくことが大切です。
障害のある子どもの財産管理には5つの方法がある
親亡き後の生活を考えるとき、代表的な方法として次の5つが考えられます。
① 成年後見制度
本人の判断能力が十分でない場合に、家庭裁判所が選任した成年後見人等が、財産管理や法律行為などを支援する制度です。
② 任意後見制度
本人に十分な判断能力があるうちに、将来の支援者や支援内容をあらかじめ決めておく制度です。
③ 家族などによる日常生活の支援
買い物や支払い、生活上の手続きなどを、家族などがサポートする方法です。
④ 信託などを活用する
将来の生活費などに使う財産について、管理や承継の方法をあらかじめ設計する方法です。
⑤ 福祉・地域の支援を組み合わせる
障害福祉サービス、相談支援機関、社会福祉協議会などと連携して、生活全体を支える方法です。
ただし、5つの方法から1つだけを選ぶ必要があるわけではありません。
実際には、
財産管理+福祉サービス+家族の支援
のように、複数の支援を組み合わせて考えることもあります。
① 成年後見制度|財産管理や契約を法律面から支援する

親亡き後の財産管理を考えるとき、よく耳にするのが成年後見制度です。
簡単にいうと、
本人だけでは財産管理や契約などが難しい場合に、法律面から本人を支援する制度
です。
たとえば、
- 預貯金などの財産管理
- 年金などの収入管理
- 福祉サービスに関する契約
- 施設入所などに関する契約
- 財産に関する法律行為
などについて支援します。
成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」がある
成年後見制度は、大きく分けると、
法定後見制度と任意後見制度
があります。
法定後見制度は、本人の判断能力が十分でなくなった後に、家庭裁判所が成年後見人・保佐人・補助人を選任する制度です。
一方、
任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来の支援について契約しておく制度です。
この記事でまず知っておきたいのは、「成年後見=親が自由に子どもの財産を管理できる制度」ではないということです。
本人の財産を守り、本人の生活や権利を支えるための制度です。
法定後見には「後見・保佐・補助」がある
法定後見制度には、次の3つの類型があります。
| 類型 | イメージ |
|---|---|
| 後見 | 判断能力を欠く状態が通常の人を支援 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な人を支援 |
| 補助 | 判断能力が不十分な人を支援 |

たとえば、
「一人で財産管理をすることが難しい」
という場合でも、その程度によって必要な支援は異なります。
なお、障害者手帳の有無や等級だけで、後見・保佐・補助が決まるわけではありません。
本人の判断能力や生活状況などを踏まえて、家庭裁判所が判断します。
成年後見人は親になれる?
ここは、障害のある子どもの親にとって気になるポイントです。
親族が成年後見人の候補者になることはあります。
しかし、
「親だから必ず成年後見人になれる」というわけではありません。
成年後見人等は家庭裁判所が選任します。
そのため、
「将来はきょうだいや親族にお願いしたい」
と考えている場合も、実際にどのような方法が適切なのか、早めに相談しておくと安心です。
⚠️ 成年後見制度は「成人」が対象
ここは特に注意したいポイントです。
成年後見制度は、基本的に成年者を対象とする制度です。
まだ未成年の子どもについては、親権者による財産管理など、成年後見制度とは異なる仕組みがあります。
そのため、
「障害のある子どもが現在何歳なのか」
によって、考えるべき制度が変わります。
この記事では主に、将来成人した障害のある子どもの親亡き後を想定しています。
② 任意後見制度|元気なうちに「将来の支援」を決めておく

任意後見制度は、法定後見とは少し考え方が違います。
本人に十分な判断能力があるうちに、
「将来、自分で財産管理などをすることが難しくなったら、この人に支援してもらいたい」
という内容をあらかじめ契約しておく制度です。
たとえば、
「将来、銀行の手続きや財産管理が難しくなった場合には、この人にお願いしたい」
という希望を事前に決めておくイメージです。
ただし、任意後見制度を利用するには、本人が契約の内容を理解して判断できる状態であることが前提となります。
すでに本人の判断能力が十分でない場合などは、任意後見契約を新たに結ぶことが難しい場合があります。
③ 家族などによる日常生活の支援
成年後見制度を利用していない場合でも、家族などが日常生活をサポートすることはあります。

たとえば、
- 買い物を手伝う
- 支払いを一緒に確認する
- 書類の記入をサポートする
- 行政手続きについて一緒に確認する
- 生活上の相談に乗る
などです。
ただし、ここで注意したいのが、
「家族だから、本人に代わって何でもできる」とは限らない
ということです。
特に、本人名義の財産に関する重要な手続きや法律行為では、家族であることだけを理由に本人の代理ができるとは限りません。
そのため、
「親が今やっていることを全部書き出す」
ことから始めると、将来必要な支援が見えてきます。
④ 信託などを活用して財産管理を考える
親が子どもの将来のために財産を残したい場合、信託などを活用する方法もあります。
信託を簡単にたとえるなら、
「この財産を、この目的のために管理して使ってください」と、財産の管理方法をあらかじめ設計する仕組み
です。

たとえば、親が亡くなった後に子どもの生活費として使えるよう、財産の管理・承継方法を検討するケースがあります。
ただし、信託は契約内容や財産状況によって仕組みが変わるため、専門的な検討が必要になることがあります。
また、
「信託を利用すれば成年後見制度が必要なくなる」
と単純に考えることもできません。
財産管理だけでなく、
- 福祉サービス
- 住まい
- 医療
- 契約
- 日常生活
などをどう支えるかも考える必要があります。
⑤ 福祉・地域の支援を組み合わせる
親亡き後を考えるとき、財産だけを考えていても十分ではありません。
大切なのは、
お金+住まい+福祉+医療+日常生活
をまとめて考えることです。
たとえば、
- 市区町村の障害福祉窓口
- 基幹相談支援センター
- 社会福祉協議会
- 成年後見制度の中核機関
- 相談支援事業所
などに相談する方法があります。
「中核機関」という言葉は少し難しいですが、簡単にいえば、
成年後見制度などの権利擁護について、地域の相談や関係機関との連携を支える窓口
です。
なお、名称や設置方法は自治体によって異なる場合があります。
親が元気なうちにやっておきたい4つの準備
「成年後見制度を利用するかどうか」を決める前に、まずは現在の状況を整理してみましょう。

① 子どもの財産を一覧にする
まずは、
- 普通預金
- 定期預金
- 証券
- 保険
- 不動産
- その他の財産
などを確認します。
重要なのは、
「どこに、何が、どれくらいあるのか」
を家族が把握できるようにしておくことです。
② 毎月のお金の流れを整理する
次に、
「毎月いくら入って、いくら使っているのか」
を確認します。
たとえば、
年金・手当など
↓
家賃・食費・光熱費・福祉サービス費など
↓
残ったお金
という形です。
これを整理しておけば、親亡き後に毎月どの程度のお金が必要なのかを考えやすくなります。
③ 子どもの生活に必要な支援をまとめる
お金だけでなく、
- 利用している福祉サービス
- 通院先
- 相談支援事業所
- グループホームなどの住まい
- 緊急時の連絡先
- 日常生活で必要なサポート
なども整理しておきましょう。
④ 「親ができなくなったら困ること」を書き出す
これが特に重要です。
たとえば、
「銀行の手続きは誰がする?」
「年金の手続きは?」
「福祉サービスの契約は?」
「家賃はどうやって支払う?」
「親が亡くなった後、相続した財産はどう管理する?」
と考えてみます。
「親ができなくなったら困ることリスト」
を作るだけでも、必要な支援が見えてきます。
成年後見制度は「親が亡くなってから」考えればいい?
必ずしもそうではありません。
むしろ、親が元気なうちに、
「将来、子どもの生活を誰が支えるのか」
を考えておくことが大切です。
ただし、
すべての家庭が成年後見制度を利用しなければならないわけではありません。
本人の状況によっては、成年後見制度以外の方法や、福祉・地域の支援を組み合わせることも考えられます。
大切なのは、
制度を先に決めるのではなく、「親がいなくなったら何に困るのか」を先に整理することです。
成年後見制度の費用は?

成年後見制度を検討するとき、費用も気になるところです。
法定後見の申立てでは、裁判所の案内上、後見開始の申立手数料800円、登記手数料2,600円などが必要です。
ただし、
- 郵便切手
- 診断書の作成費用
- 鑑定が必要になった場合の費用
などは、家庭裁判所やケースによって異なります。
また、成年後見人等の報酬についても、全国一律の固定料金ではありません。
家庭裁判所が、本人の財産状況や成年後見人等が行った事務の内容などを考慮して決定します。
さらに、自治体によっては、成年後見制度利用支援事業として、申立費用や成年後見人等の報酬を助成している場合があります。
対象者や助成額などは自治体によって異なるため、住んでいる自治体への確認が必要です。
よくある質問
Q. 障害者手帳があれば成年後見制度が必要ですか?
いいえ。
障害者手帳を持っていることだけで、成年後見制度の利用が決まるわけではありません。
本人の判断能力や生活状況などを踏まえて検討されます。
Q. 親が子どものお金を管理していても大丈夫ですか?
現在の生活に必要な範囲で、家族が子どもの生活をサポートすることはあります。
ただし、
家族だから本人に代わってすべての法律行為ができるわけではありません。
将来困りそうな手続きを洗い出し、必要に応じて相談することが大切です。
Q. 成年後見制度を利用すれば、すべて解決しますか?
そうとは限りません。
成年後見制度は重要な選択肢ですが、
- 財産管理
- 福祉
- 医療
- 住まい
- 日常生活
のすべてを一つの制度だけで解決するものではありません。
Q. 親が元気なうちに相談してもいいですか?
もちろんです。
むしろ、親が元気なうちに将来について相談しておくことは大切です。
まずは、市区町村の障害福祉窓口や相談支援機関などに、
「親亡き後の生活について相談したい」
と伝えてみるのも一つの方法です。
まとめ|親亡き後の準備は「制度選び」より「困ること探し」から
障害のある子どもの将来を考えると、
「親がいなくなったら、この子のお金はどうなるのだろう?」
と不安になるかもしれません。
しかし、最初から成年後見制度を利用すると決める必要はありません。
まずは、
親が元気なうちに
① 財産を整理する
↓
② 毎月のお金の流れを整理する
↓
③ 子どもの生活に必要な支援を整理する
↓
④ 親ができなくなったら困ることを書き出す
↓
⑤ 必要に応じて相談窓口につなげる
という順番で考えてみましょう。
成年後見制度は、その中で検討する重要な選択肢の一つです。
また、任意後見、信託、家族による日常生活の支援、福祉・地域の支援などを組み合わせて考えることもできます。
「親亡き後」を考えることは、親がいなくなった後のことだけを考えるという意味ではありません。
親が元気なうちに、子どもがその後も安心して生活できる仕組みを少しずつ準備しておくこと。
それが、将来の不安を減らす第一歩になります。
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注意事項
※この記事は、障害のある子どもの親亡き後の財産管理について、制度の一般的な情報を紹介するものです。個別のケースについて、成年後見制度の利用が適切かどうかを判断するものではありません。
※成年後見制度は、本人の判断能力、生活状況、財産状況などによって利用できる制度や手続きが異なります。
※申立てに必要な書類、費用、郵便切手などは家庭裁判所によって異なる場合があります。具体的な手続きについては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所や自治体の相談窓口、必要に応じて弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職に確認してください。










