近年、「若者は結婚したがらない」「結婚離れが進んでいる」といった声を耳にする機会が増えました。
しかし、本当に若い世代は結婚を望んでいないのでしょうか。
2026年に国連人口基金(UNFPA)が世界73か国・地域、約10万9,000人を対象に実施した調査では、多くの若者が結婚や子どもを望んでいる一方で、「経済的な不安」が大きな壁になっていることが明らかになりました。
さらに、日本の公的統計を見ても、「結婚したくない」というより、「結婚したくても将来に不安がある」という実態が浮かび上がっています。
この記事では、国連調査と日本の公的データをもとに、「若者は結婚したくない」というイメージは本当なのか、その背景をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 若者は本当に結婚したくないのか
- 国連(UNFPA)調査で判明した「88%が経済的安定を重視」の意味
- 日本の統計から見える若者の結婚観
- なぜ経済的不安が結婚や出産の壁になるのか
結論|「結婚したくない」のではなく、「結婚できない」が実態に近い

まず結論からお伝えすると、「若者は結婚したくない」という見方は必ずしも正確ではありません。
国連人口基金(UNFPA)の2026年調査では、約3分の2の若者が結婚を望んでいると回答しています。
一方で、
- 88%が「子どもを持つには経済的安定が必要」
- 87%が「安定した雇用が必要」
- 57%が「経済や住宅事情が結婚の障壁」
と回答しており、「希望はあるが、現実が追いついていない」という状況が浮かび上がりました。
つまり、
「結婚したくない」のではなく、「安心して結婚できる環境が整っていない」と考える若者が多いことが、この調査から読み取れます。
国連(UNFPA)調査とは?
今回話題になったのは、国連人口基金(UNFPA)が2026年に公表した世界規模の調査です。
調査概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施機関 | 国連人口基金(UNFPA) |
| 対象 | 73か国・地域 |
| 回答者 | 約10万9,000人 |
| 年齢 | 18~39歳 |
※出典:UNFPA Tokyo Office「世界の出生力に関する調査(2026年)」
調査で判明した4つのポイント

① 約3分の2が「結婚したい」
「若者は結婚に興味がない」というイメージとは異なり、多くの若者は結婚そのものを希望しています。
これは世界共通の傾向であり、「結婚離れ」という単純な話ではないことがわかります。
② 88%が「経済的安定」を重視
最も注目された結果がこちらです。
子どもを持つ条件として、
88%
が「経済的安定が必要」と回答しました。
つまり、
- 十分な収入
- 将来への安心
- 家計の見通し
がなければ、子どもを持つことは難しいと考えている人が圧倒的多数だったのです。
③ 87%が「安定した雇用」を重視
経済的安定と並んで重要視されたのが、雇用の安定です。
正社員かどうかだけではなく、
- 将来も働き続けられるか
- 昇給が見込めるか
- 転職や失業のリスク
なども含め、「長期的な生活設計が描けるか」が重要視されていることが分かります。
④ 住宅費も大きな壁
調査では57%が、
「住宅事情や生活コストが結婚の障壁」
と回答しました。
家賃や住宅価格の上昇は、日本だけでなく世界中で共通する課題となっています。
日本でも同じ傾向が見られる
日本でも、「若者は結婚したくない」というイメージとは異なる調査結果があります。
例えば、日本財団の第77回「18歳意識調査(価値観・ライフデザイン)」では、
将来結婚したいと回答した人は58.1%でした。
3年前より7ポイント低下したものの、依然として過半数は結婚を希望しています。
つまり、日本でも「結婚そのものを望まない人ばかり」という状況ではありません。
一方で、将来への不安や経済的負担が結婚へのハードルとなっていることがうかがえます。
若者が感じる4つの経済的不安
UNFPAの調査では、多くの若者が結婚や子どもを望む一方で、**「将来への経済的不安」**が大きな壁になっていることが分かりました。日本でも同様の傾向が、公的統計や意識調査から見えてきます。
① 収入への不安
結婚後は生活費だけでなく、住宅費や子育て費用も必要になります。
厚生労働省の毎月勤労統計では賃金の改善が見られる一方、物価上昇の影響も続いており、「将来も今の生活を維持できるのか」と不安を感じる若者は少なくありません。
② 雇用の安定
結婚は長期的な人生設計です。
そのため、給与だけでなく「この先も安定して働き続けられるか」を重視する人が増えています。UNFPA調査でも、87%が安定した雇用を重要視していました。
③ 住宅費の負担
家賃や住宅価格の上昇は、新生活を始める大きなハードルです。
日本でも都市部を中心に住宅費の負担が重く、「結婚したくても住まいを確保しにくい」という状況が続いています。
④ 子育て・教育費
子どもを育てるには、長期間にわたって教育費がかかります。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」では、年間の学習費総額は公立小学校で約36万7千円、私立小学校では約174万2千円となっており、進学先によって大きな差があります。
こうした将来の支出を考えると、「子どもを持ちたい」という希望があっても、一歩を踏み出しにくいと感じる人は少なくありません。
日本の出生数は過去最少を更新
厚生労働省が公表した「令和6年(2024年)人口動態統計(確定数)」によると、出生数は68万6,173人となり、統計開始以来で最も少なくなりました。
また、合計特殊出生率も1.15と過去最低を更新しています。
人口動態統計の主なポイント
| 項目 | 2024年 |
|---|---|
| 出生数 | 68万6,173人 |
| 合計特殊出生率 | 1.15 |
| 死亡数 | 160万5,378人 |
| 自然減 | 91万9,205人 |
出生数は前年から約4万人減少し、人口の自然減も過去最大となりました。
一方で、婚姻件数は48万5,092組と前年よりやや増加しており、「結婚そのものを希望する人がいなくなった」と単純には言えない状況です。
「価値観の変化だけ」が少子化の原因ではない
少子化については、「若者の価値観が変わったから」という説明を目にすることがあります。
もちろん、結婚や出産に対する考え方は以前より多様化しています。
しかし、それだけで現在の状況を説明するのは難しいでしょう。
誤解されやすいポイント
× 若者は結婚したくなくなった
↓
○ 結婚したい人は今も多い
↓
しかし
- 将来の収入に不安がある
- 雇用が安定しない
- 住宅費が高い
- 教育費の負担が大きい
このような理由から、結婚や出産のタイミングを遅らせたり、あきらめたりするケースが増えていると考えられます。
国連(UNFPA)の調査で「88%が経済的安定を重視」と回答した結果も、この構図を裏付けています。
子育てにかかる教育費も大きな負担
結婚後に不安視されるものの一つが教育費です。
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」では、年間の学習費総額は次のようになっています。
| 学校 | 年間 |
|---|---|
| 公立小学校 | 約37万円 |
| 私立小学校 | 約174万円 |
進学先によって差はありますが、教育費は長期間にわたり家計へ影響します。
そのため、「子どもを育てたい」という気持ちがあっても、将来の支出を考えると踏み切れないという声は少なくありません。
家計への不安は今も続いている

総務省「家計調査(2025年平均)」では、勤労者世帯の実収入は名目では増えているものの、物価を考慮した実質では前年を下回っています。
また、厚生労働省「毎月勤労統計調査(2026年5月速報)」では実質賃金に改善の動きが見られる一方で、食料品や住宅関連など生活コストへの不安は依然として大きな課題です。
つまり、「賃金が上がっている」というニュースだけでは、若い世代が感じる生活実感を十分に説明できない面があります。
国立社会保障・人口問題研究所の調査から見えること
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「第16回出生動向基本調査」でも、多くの未婚者が「いずれ結婚するつもり」と回答しています。
一方で、
- 適当な相手と巡り会えない
- 経済的な不安
- 仕事との両立
- 結婚後の生活への不安
などが結婚をためらう理由として挙げられています。
この結果も、UNFPA調査が示した「経済的・社会的な障壁」と共通する傾向です。
今後、少子化対策で重要になること
少子化対策では、子育て支援だけでなく、「結婚を希望する人が将来設計を描きやすい環境づくり」も重要と考えられています。
例えば、
- 安定した雇用の確保
- 若年層の所得向上
- 住宅支援
- 教育費の負担軽減
- 仕事と子育てを両立しやすい働き方
などは、政府の少子化対策でも重点項目として位置付けられています。
よくある質問(FAQ)
若者は本当に結婚したくないのでしょうか?
いいえ。UNFPA調査では約3分の2が結婚を望んでおり、日本財団の調査でも「将来結婚したい」と回答した18歳は58.1%でした。
「88%が経済的安定を重視」とはどういう意味ですか?
UNFPA調査では、子どもを持つための条件として88%が「経済的安定」を重要視していました。多くの若者は、十分な収入や将来への安心感があって初めて家族を持ちたいと考えています。
少子化は価値観だけが原因ですか?
価値観の変化も一因ですが、それだけでは説明できません。経済的負担や住宅費、教育費、雇用の不安など、複数の要因が重なっていることが国内外の調査から分かっています。
日本の出生数はどのくらい減っていますか?
2024年の出生数は68万6,173人で、統計開始以来最少となりました。合計特殊出生率も1.15と過去最低を更新しています。
若者は何歳までに結婚したいと思っている?
日本では男性・女性とも晩婚化が進んでいます。
結婚したくない人は増えている?
希望する人は依然として多数ですが、経済的不安などを理由に結婚を先送りする人が増えています。
UNFPAとは?
国連人口基金(United Nations Population Fund)は、人口・リプロダクティブヘルスなどを支援する国連機関です。
まとめ
「若者は結婚したくない」というイメージは、実際の調査結果とは少し異なります。
国連人口基金(UNFPA)の調査では、多くの若者が結婚や子どもを望んでいる一方で、88%が「経済的安定」を重視していることが明らかになりました。
日本の公的統計や意識調査でも、「結婚したい」という希望は依然として根強いものの、収入や雇用、住宅費、教育費など将来への不安が大きなハードルになっていることがうかがえます。
少子化を「価値観の変化」だけで捉えるのではなく、若い世代が安心して将来設計を描ける環境づくりが、これからますます重要になるでしょう。
「若者は結婚したくない」という一言では、現在の状況を十分に説明することはできません。
世界と日本の調査から見えてくるのは、多くの若者が結婚や家庭を望みながらも、経済的な不安や将来への見通しの立てにくさから、その一歩を踏み出しにくくなっている現実です。
少子化を考えるうえでも、価値観だけでなく、安心して人生設計ができる社会環境に目を向けることが重要といえるでしょう。
参考資料・出典
- 国連人口基金(UNFPA)Tokyo Office「State of World Population 2026」
- 国連人口基金(UNFPA)世界出生力調査(2026)
- 厚生労働省「令和6年(2024年)人口動態統計(確定数)の概況」
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年5月分結果速報」
- 総務省統計局「家計調査報告(2025年平均)」
- 総務省統計局「消費者物価指数」
- 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」
- 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」
- 内閣府「少子化社会対策白書」
- 日本財団 第77回18歳意識調査「価値観・ライフデザイン」












